社会課題の解決やイノベーションの創出を目的に会社を立ち上げるスタートアップ企業が存在感を高めつつある。しかしながらスタートアップ企業の多くは、新しいアイデアをビジネスとして具現化するために必要な資金やテクノロジーの調達に苦労を強いられているのが実情だ。そうした課題に対し起業家たちはどのように立ち向かっているのか。「DWEN Dream Techビジネスコンテスト 2022」（デル・テクノロジーズ主催）を受賞したASTRA FOOD PLANの加納千裕氏に、事業を成長させていくうえでのコンテストや企業の起業家支援の意義、テクノロジーの役割について話を聞いた。
スタートアップ企業の課題を解決する コンテストへの参加
―― はじめに、ASTRA FOOD PLANの事業内容を紹介してください。
加納 ASTRA FOOD PLANは、「過熱水蒸気技術」を用いた食品乾燥・殺菌装置の研究開発・販売と、未利用資源の粉末化によるアップサイクル事業を手掛ける企業です。高温スチームの過熱水蒸気による食品加工技術はもともと父の会社が20数年前に発案・開発したものです。この技術を使って、規格外青果をピューレ状に加工して流通させるというビジネスでしたが、当時は規格外青果を廃棄するフードロスの問題よりも経済性が優先された時代だったこともあり、残念ながら事業に失敗してしまいました。
しかし、栄養価が高く添加物を使わない安全な食品づくりとフードロス対策を両立させるこの技術を無駄にしたくないという思いから、今度はピューレではなくパウダーに加工できる乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」を開発し、私が代表となって2020年にASTRA FOOD PLANを起業しました。
加納 千裕 氏
ASTRA FOOD PLAN 株式会社
代表取締役社長
ハイブリッドワークにも最適な
インテル® Core™ Ultra プロセッサー 搭載「Latitudeシリーズ」
―― 加納さんは起業してからさまざまなビジネスコンテスト／ピッチコンテストに積極的に参加し、各賞を受賞しています。スタートアップ企業がコンテストに参加する意義をどのように考えていますか。
加納 スタートアップ企業が直面する一番の課題は、事業資金を調達することです。資金を調達するには自社のPRが必要であり、その効果的な手法として投資家からアドバイスされたのがビジネスコンテストへの参加でした。
最初に参加したのは、埼玉県が主催する女性のためのビジネスコンテスト「SAITAMA Smile Women ピッチ 2022」でした。このコンテストで最優秀賞を受賞し、その結果として会社の社会的信用度が上がり、金融機関からの追加融資につながりました。続いて参加した「フードテックグランプリ」（リバネス主催）では2つの企業賞を受賞し、取引先のネットワークを広げることができました。創業から2年間は資金繰りに苦労していましたが、ビジネスコンテスト／ピッチコンテストに参加して賞をいただいてからは投資家や銀行からの反応も良くなりました。このように社会的信用度の向上と資金調達という面から、コンテストへの参加は大きな意義があったと思います。
ASTRA FOOD PLANが開発する「過熱蒸煎機」は、食品の風味の劣化と酸化、栄養価の減少を抑えながら乾燥と殺菌を同時に行うことが可能で、 “かくれフードロス”となっている野菜の端材や規格外・余剰農作物、飲料残さなどの未利用資源をアップサイクルすることができる。同社では過熱蒸煎機の開発・販売のほか、過熱蒸煎機を使ってできる各種パウダーを販売。「ぐるりこ®」と命名し流通拡大を目指している。
女性起業家を支援するデルのビジネスコンテストに入賞
―― デル女性起業家ネットワーク（DWEN：Dell Women's Entrepreneur Network）が主催する「DWEN Dream Tech ビジネスコンテスト 2022」にも参加し、一般投票により3位入賞を果たしましたね。
加納 当社のビジネスをサポートしてくれているステークホルダーから参加を勧められたのが、デルのDWEN Dream Tech ビジネスコンテストでした。審査の結果、ファイナリストに選出され、一般投票を経て3位入賞を果たすことができました。一般の方々から共感を得られたということで、他のコンテストとは違う大きな喜びを感じています。
―― DWEN Dream Tech ビジネスコンテストは、事業成長戦略としてテクノロジーを取り入れている女性起業家を対象にしています。ASTRA FOOD PLANではどのようにテクノロジーを活用していますか。
加納 当社のビジネスにとってPCをはじめとするテクノロジーの活用は欠かせません。コンテストに参加する前からデルの製品を使っていたのですが、製品の設計・開発にPCは欠かせません。また私が会社を立ち上げたのは新型コロナウイルス禍の真っ只中だったこともあって、当初からリモートワークが当たり前でした。取引先との商談もPCでのオンライン会議がほとんどです。
